【波瀾万丈】 エシカルSTORY代表木村洋平にインタビューした。後編
僕と孤独と哲学と
東京大学で哲学を学び、市役所勤務、ライター、編集業を経てエシカルメディアで起業。
異色な経歴をもつ木村洋平さんにお話を伺った。
この記事は「後編」です。
東京大学で哲学専攻、公務員を爆速で退職、編集長、メディア立上げ。
長い旅の末にエシカルSTORYを立上げた木村さん。
しかし、そこには周囲の評価が得られない孤独がありました。そんな木村さんだからこそ作れるサービスがあります!
エシカルSTORY第2世代!
木村:メディアはどうしてもマス打ちが必要になるんですよね。
閲覧数を稼ぐことで広告費とかが稼げるので。私はマス打ちをし続けることに抵抗感が消えないので、このモデルは合っていないなと。
中瀬:たしかにそうですね。
木村:エシカルストーリーをコミュニティサービスとして作り直そうかと思っています。
取材やSDGs系のイベントで活動者の方にお話を伺うと、心細さを感じるとよく聞くんですね。
「自分と同じようなことを考えて活動してる人はいるのか。」「このまま活動・発信していて、共感してくれる人はいるのか。」という。
木村:こういった方々に対して、月額で入れる「エシカルSTORY・コミュニティ」を提供して、メンバー同士が交流する場を設ける。
自分は一人じゃないんだと感じられて、そこで生まれたつながりから新しい仕事も生まれていく。そういったサービスに切り替えていこうと考えてます。
中瀬:自立して行動を起こしている方、まさにこれまで取材対象になっていたような方々が入るコミュニティですよね。
木村:そうそう。自分で何かやり始めてる人だよね。
大学時代に周囲との軋轢で孤独を感じた木村さんだからこその気付きだ!
孤独に苦しむことで得られたビジネスの感覚
中瀬:エシカルSTORYではいくつかPR記事も書かれていますが、これは各所から依頼が来て書かれることが多いんですか?
木村:こっちから営業したもの、先方から依頼が来たもの、どちらもありますね。営業もなかなかきつかったですよ。
中瀬:断られることが多いとかですか?
木村:それもあるし、記事制作・編集に加えて営業も、となると負担が大きいですからね。
カメラ持って撮影も自分でおこなうことも何度もありました。
中瀬:他の人にライティングを任せて自分は営業一本、ではないんですね。
木村:そういう時期もありましたね。編集長が仲間に加わってからは、ライティングは人に任せて、自分は会社の顔として動き回っています。
中瀬:有名なエシカルブランドである、オールバーズの記事も書かれてますよね。
木村:そうだね。最初にオールバーズの取材記事を出した頃、オールバーズは日本に上陸したてでまだ流行ってなかったんだけど、こちらから連絡して記事を書きました。靴も買いましたよ。
中瀬:先回りして動かれてたんですね。
木村:メディアにとって嗅覚はすごい大事だと思う。
中瀬:嗅覚を磨くためにやっていることありますか?
木村:自分が死ぬほど苦労することだね。人生で。
中瀬:なぜそう思うんですか?
木村:体壊したり、収入が不安定になったりすると辛いじゃないですか。
そういう他の人がそんなに経験しないような苦労もしてきたので、周りで死ぬほど苦しそうな体験をしてる人に共感できるようになったというか。人間や事業を見るときの独自の感覚が身についたと思います。
中瀬:なるほど、嗅ぎ方。
クンクン
「極北の孤独」
中瀬:取材の中で何度も登場したキーワードとして、「孤独」があると思いますが、孤独というのが人生を通して一つ大きなテーマなのでしょうか。
木村:そうですね。僕は自殺を考えてしまうほど孤独っていうのが10年以上続いたので。
『遊戯哲学博物誌』も、15年かけて執筆・出版しましたが、いまだにほとんど認められていません。
中瀬:今も孤独だと感じられますか。
木村:今はそこまでではないかもしれないです。エシカルの話をすると「また木村さんがエシカルの話してる!笑」みたいに聞いてくれる人も周りにいてくれるので。
まあでも本当に、極北と言っていいほど孤独でしたね。僕は。
極北と呼べるほどの孤独。そんじょそこらの孤独ではない。
中瀬:木村さんにとって、孤独は悪い側面だけではなくて、大切にされてることでもあるんですかね。
木村:好きで孤独でいるわけではないんだけどね笑
孤独が悪いことだから早く友人を作ろうとか、そういうのはないよね。孤独は悪いことではない。
中瀬:一番孤独だったのはいつでしたか。
木村:20代半ばくらいで、大学を卒業して『遊戯哲学博物誌』をずっと書いてた頃かな。
書いてる本が形になるのは何年も先で、内容を友人に話しても理解されないし、周りの哲学書を読んでも私と似たようなことを書いてる本はどこにもない。
自分が書いていてもリアルタイムでは誰も喜ばないけど、自分の使命感として「これは歴史にとって凄く重要な本だ」と思ってて。
信じて書いてたんですよ。だからこそ評価を得ていないと感じて、孤独だったね。
ベートーベンやバッハの重い曲を流して一人で泣いていましたよ。
中瀬:それは孤独ですね笑
木村:私は難病も持ってないし、五体満足という意味だと障害も持ってない。
ただ、取材とかで障害を持っている方と話してても、どこか通じ合えるというか。そういうのは孤独な経験から育まれたと思う。
中瀬:「これは歴史的に重要な哲学書だ」と思って本を執筆されたとお話しされていましたが、今でもその哲学書は歴史的に重要だったと思いますか。
木村:執筆した哲学書の前書きに「2600年の西洋哲学史に休息を与えたい」と書きました。この本で西洋の哲学史を終わらせた、という意識がはっきりありました。それはさすがに考え過ぎか、と当時は思ったんだけど、今はやっぱりあれで終わったんだと思う。
西洋哲学の歴史すらも変えてしまった木村さん。そんな木村さんが思い描くビジョンは何なのでしょうか。
━━━木村さんが命をかけて取組まれてきた「哲学」。インタビューの中で分かりやすくお話しいただきました。
哲学に関する内容は番外編「木村さんに哲学教えてもらった」にてお届けしますので、ぜひご覧ください!
木村さんの描く未来
中瀬:今後やりたいことを教えてください。
木村:「新しい文明の礎を築く」をビジョンにしようと思っています。文明は古代から色々あるけど、20世紀は「大量消費文明」だった。
工業的に大量生産して、湯水のようにお金やモノをあふれさせて、豊かさを享受する。
余ったものは大量廃棄するので、地球に負荷をかけまくって環境問題が顕在化して、SDGsに向かっている。
大量消費文明はもう続けられないので、新しい文明を立ち上げましょう
中瀬:新しい文明が立ち上がった世界はどういうものだと思いますか。
木村:移動をメインにする旅的な生き方と、定住的な生き方。
この二つが半々くらいでバランスを取るんだと思う。そして、ローカルや循環、手作りが盛んになる。一次産業と食の大切さが見直される。そういう方向だと考えています。
旅と定住でいうと、縄文時代から弥生時代にかけて、居住形態は移動から定住へと変わっていった。
定住生活は農耕によって生まれたので、蓄えの差が出てヒエラルキーも生まれた。
木村:これは現代に至るまで繋がっていると思ってます。
大企業や官庁、栄えている自治体がヒエラルキーのトップにいて、非正規や障害を抱えている方が下の方。
女性や若い人、子供もそうですね。こういうヒエラルキーがある社会の構造は弥生時代から基本的に変わっていない。
最近は移動が娯楽や行事に伴って行われる一過性のものではなく、「移動しながら生きる」人が増えている。ノマドワーカーとかね。
移動しながら生きる狩猟採集的な生活が、また勢いを増してくると思う。移動しながら遊戯的に生きる人が増えて、一方でこれまでと変わらない生活を送るオフィスワーカー的な人もいて。
これが上手くバランスをとって協力していけると、新しい事に挑戦して生み出していけるような活力ある文明になるのではないか。
そう思いますね。
・・・空でこの話をしてしまうあたり、木村さんはただものではありませんでした。
取材を受けていただき本当にありがとうございました!
中瀬:木村さん、本日はありがとうございました!特に最後のお話には圧倒されてしまいました。
今後ともぜひよろしくお願いいたします!
木村:こちらこそありがとうございました!
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