【エシカルなハウスクリーニング】エシカルノーマルCEO本川誠さん 後編
人と地球に優しいハウスクリーニングを
ハウスクリーニング業界。
エアコンや水回りの清掃を行うその仕事では、意外にも劇薬が使われているのだそう。
そんなハウスクリーニング業界で「人と地球に優しいハウスクリーニング」を展開するスタートアップが存在する。
今回はエシカルノーマルCEO 本川誠さんに話を伺った。
この記事は「後編」です
まだお読みでない方はぜひ前編からご覧ください。
前編では本川さんの現在の取組や大物すぎるアルバイトエピソード、家族をきっかけに考え方が変わったお話を伺いました。
後編ではエシカルノーマル誕生秘話や今後の目標について話していただきます。
おじさんスタートアップ参上
中瀬:2021年にエシカルノーマルを創業されていると思います。メディアへの露出など、2022年に本格始動しているように見えますが、その期間は主にどういったことをされていたのですか。
本川:大体マリオカートしてましたね。
中瀬:・・・(笑)
本川:おじさん4人でエシカルノーマルを立ち上げて、私以外の3人が主に洗剤や手法を開発していました。
私はエシカルノーマルのブランドを作ろうと思っていたので、ユニホームを作ったりキャッチコピーを考えたりしてました。他にはブランディング的なところをどうしていくかだったり、10Rを考えたりと主に会社の土台を作っていました。
中瀬:洗剤だったり手法の開発というのは具体的にどのような形で行ってたんですか。
本川:元々劇薬を使って掃除していたメンバーなので、エシカルなもので本当に汚れを落とせるのかみたいなところから始まり、あらゆるものを試しましたね。
ヒートガンのような工具だったり普通は掃除に使わない道具でも使えるんじゃないかと試行錯誤しました。
エシカルパウダーに使用されている大分の温泉成分はシリカゲルという乾燥剤に使われていて世の中には多く出回っているんですが、それを清掃に使う人がいなかったんですよ。
中瀬:工具のような清掃に関係のない道具を持ち込んで汚れを落とせるかどうかを試行錯誤されてたのは意外でした。
本川:私はその開発に関わってなかったんですが、他のメンバーは楽しそうにしてましたね。
創業メンバーの1人は元々私が経営していたハウスクリーニングの従業員で、残りが経営者でみんな自分の会社で飯は食っていけてたので、最初の1年は悠長にしてました。
次はこれを試せたらいいねみたいな感じで酒飲みながらミーティングをしたり楽しくしてました笑。
中瀬:楽しそうでいいですね笑。
本川:最初の頃はおっさん経営者が集まって思い出作り事業をしてるように見えて、本気のスタートアップの人達にバカにされてたかもしれません笑。
その分、今はハゲそうなくらいしんどいですけどね。
中瀬:楽しむというところは変わらないかもしれませんが、マインドセットはしっかりと事業を進めようという方向に切り替わったんですね。
本川:そうですね。ちゃんと事業としてやっていかないとなというフェーズになってきている感じはありますね。
中瀬:そういったフェーズになったきっかけは何だったんですか。
本川:大阪のアクセラレーションプログラムにいくつか採択され、スタートアップ仲間ができたり、VCだったり大企業の担当の人たちと関わる機会が増えるようになったんですよ。
そこで今までは限られた業界でゆるい環境にいたので、急にスピードの早い本気で命かけてやっている人達に出会って本気でやらないとなって感じで引っ張られましたね。
中瀬:やはり周りの環境で変わりますよね。
本川:後はそろそろ役員報酬取らないと私が死ぬなってのはありましたね笑
中瀬:現在は従業員の方は何名いらっしゃるんですか。
本川:役員が3名、従業員が6名います。
中瀬:従業員の6名の方はやはり本川さんの考え方に共感して入社されたんですか。
本川:エシカルノーマルを始めてから入ってきた3人はある程度分った上で入ってると思いますね。
中瀬:その3人は元々ハウスクリーニングをしていた人達だったんですか。
本川:ハウスクリーニングをしていたのは一人ですね。その方はかなりエシカルな方で、道中でゴミを見つけると拾うような人です。
面接の時もリュックからトングが出ていて「ナイスエシカル」ということで採用しました。
これから面接を受ける皆さん、非常に有益な情報です。
中瀬:他の方2人はどういった経緯で入社されたんですか。
本川:一人は営業マンの方で、私のTwitter(現X)をみて「力になりたいです」というDMをいただきその方のやる気に圧倒されて採用しました。
残りの一人はバックオフィスをしていただいてる方で、エシカルノーマルを立ち上げる際にお金のことだったり労務のことが出来る事務員的な人材がおらず、あるプロジェクトで出会って半年間くどいて入社してもらいました笑。
中瀬:エシカルノーマルで発信している内容と世間とのギャップで焦りみたいなのは感じませんでしたか。
本川:それはありますね。そこの見極めが経営者としてすごくバランスが大事だと思っています。
カーボンニュートラルの取り組みが世間と比べて早すぎることは前衛的で良いことなんですが、お客さんには響かないみたいなことはよくある話だと思っていて、半歩先ぐらいの事業をするというところは意識しています。自分たちの活動が自分たちのエゴになっていたりエゴに見えている間はうけないと思っています。
中瀬:そういった状況をどのように打破していくんですか。
本川:サービスの入り口を少し変えていて、今は「エシカルだから」と頼むのではなく、健康、家族のアレルギー、赤ちゃん、ペットがいるという理由で選んでいただいて、結果として環境に良かったらいいと思っています。
エシカルノーマルの躍進!
中瀬:2022年にクラウドファンディングをされてると思うんですがこれはどういった経緯だったんですか。
本川:資金が足りないというところもありました。
当時エシカルなハウスクリーニングを爆発的に人気にするのは難しかったり、私が現場をできるわけでは無いのでとにかく暇で自分が稼げる方法を見つけようってことで始めました。当時ちょうどオリジナル洗剤が一つ出来上がったのでMakuakeで売り始めました。
中瀬:その洗剤はどれくらい売れたのでしょうか。
本川:結果として505人に買っていただいて430万程売れました。
中瀬:素晴らしいですね。2022年にSDGs実践ビジネスコンテストにも参加していると思うんですが、これはどういった経緯だったんですか。
本川:知り合いの方にちょうどぴったりなビジネスコンテストがあるよと誘われたのがきっかけです。以前にも2,3個ビジネスコンテストに出したこともあったんですが、何かの賞には選んでもらえても優勝はできなかったので、とりあえず予選だけでも出してみようかって感じの軽い気持ちで出したんですよ。
そしたら決勝に選ばれて優勝できたんですよ。
すごい!
中瀬:2023年からメディアにかなり載られているなと感じていましたし、MVも制作されていて、会社の方針として外に発信していくというのがあったのでしょうか。
本川:もともと世に出ていきたいという気持ちはありました。本来啓蒙活動は大企業が何億ものお金をかけてすることなので、スタートアップや中小企業がすることでは無いんですよ。
しかしニーズのないところに啓蒙活動からニーズを作っていかないといけないビジネスなので、どれだけ経費を抑えて啓蒙していけるかが難しいですね。
中瀬:2023年にフランチャイズの募集を開始されていると思うんですが、開始するきっかけは何だったんですか。
本川:実は2022年の夏ぐらいから1,2店からフランチャイズをやらせてほしいと言われていたんですよ。しかしフランチャイズの定石としては、1店舗目である自分たちの店舗がお客さんで溢れて手が負えない状態になったり勝ち筋が見えてきたタイミングで始めるものなので、まだ無理ですと断っていたんですよ。
その頼んできた人はフロンティアスピリッツが溢れる方で「今後フランチャイズをしていくときの練習台として本部構築みたいなのを一緒にしていきましょう」と言われて、そこまで言われて断る理由はないなと思い、開始しました。
中瀬:その方に押し負けた感じで始めたんですね笑。
本川:そんな感じです笑。
店舗数を地道に増やしていって、マニュアルだったり体制をしっかりと作り上げてから広く募集していきたいなと思っています。
中瀬:現在はフランチャイズが何店舗あるんですか。
本川:現在は6店舗です。他にもやりたいという人がいたんですが断らせてもらいました。
中瀬:どういったことを判断基準にしているのでしょうか。
本川:エシカルを完全に商売の道具としか見てない人だったり、私たちの体制的にその方の経済的なところに責任を持てないと判断することもありますね。
中瀬:断るぐらい応募がきているのはすごいですね。
本川:フランチャイズの店舗が100、200店舗とかに拡大して、今は断っているような人たちを教育制度ができてしっかりと成り立つような仕組みを作っていきたいですね。
フランチャイズの規模がデカくなっていくことを考えると最初の10店舗には見本となってもらいたくて、これから管理、教育、エリアフランチャイズのような形でやってもらわないといけないので。今の段階では選ばせていただいているという感じです。
中瀬:これからのことを考えると最初の10店舗は大事ですね。
エシカルノーマルの安さの秘訣
中瀬:ホームページを見させていただくと価格も安いと思います。エシカルノーマルでは定期清掃をしているからだと聞いていますが、ハウスクリーニング業界では定期清掃は主流なのですか。
本川:ほぼないですね。ハウスクリーニングというのはエアコンや水回りなどを専門性をもってクリーニングするものなので、普通は毎月のように掃除することはないです。
中瀬:そうなんですね。ではどうして定期清掃をしようと思ったんですか。
本川:エシカルノーマルを始める前に劇薬を使ったハウスクリーニングを9年ほどしていたんですが、その時にエアコンを洗っていると真っ黒な汚れた水が出てくるんですよ。
それをお客さんが見ると「うわー見たくない」とか言うんですけど、どこか嬉しそうなんですよ。逆にキレイだとガッカリされるんです。なんでかというと汚れている方がお金を払った甲斐があると感じるんです。
中瀬:たしかに同じ値段だと汚い方が払った甲斐がある気がしますね。
本川:でも環境や健康のことを考えるとエアコンが汚れているということは普段からカビの胞子を吸い続けているということでもあるんですよ。
しかも長年蓄積した汚れを一発で取るには基本的には劇薬を使用しないといけなかったりします。
ここで一番エシカルなのは汚れを溜めないことなんですよ。水で落とせるぐらいの方が世の中がエシカルになると思っていて、これを体現するために安く定期清掃をしています。
中瀬:価格設定はかなり攻めてますよね。
本川:かなり苦しいですね。ただハウスクリーニングは繁忙期と閑散期が明確にある仕事なので、毎月必ず頼んでもらえることで安定はします。
他にも定期的にお客さんのご自宅にお伺いするので、その分スタッフとお客さんが仲良くなったりして信頼関係を作ってもらえることもメリットかなと思います。
エシカルな世界を作る!!
中瀬:今後エシカルノーマルのビジネスとして何年までにフランチャイズを何店舗にするだったり、何年までに実現したいといった目標はありますか。
本川:2024年の3月までにフランチャイズを7店舗にしたいなと思っています。2024年の途中から第二期の募集の開始を考えていて、全国に100〜150店舗ぐらいまで増やしていきたいと思っています。大きな目標としては日本全国にエシカルノーマルのサービスを届けられるようにしたいというのがあります。
中瀬:ハウスクリーニング業界全体を変えたいといった気持ちはありますか。
本川:業界全体が変わるかどうかはお客さんの選択次第だと思っていて。一般的なハウスクリーニングより少し高いエシカルノーマルを選ぶ割合が3割を超えてくると大企業も必ず動き出してくると思うんですよ。そうなると個人でしてる方も影響を受けて環境に配慮するようになると思うので、エシカルノーマルが全国に広まることで結果として業界全体が変わってくれたらいいなという思いはあります。
日本が変わった次はアジア全体に広めたいですね。
中瀬:現在エシカルノーマルはハウスクリーニング業界において特別な存在だと感じます。もし今後エシカルノーマルのサービスが当たり前になった世界でエシカルノーマルはどういった存在になると思いますか。
本川:私たちがたまたまハウスクリーニング業界の闇を知ったところから何かこの業界で出来ることがあるんじゃないかってことで始まったんですよ。
別にこの業界のCO2の排出量は他の業界から比べたら全然少ないと思うんですよ。やっぱりエシカルを普通にしたいという社名を冠している以上は他の業界の勇者達と一緒に他の業界もエシカルにできるような存在になりたいですね。
中瀬:とても勉強になりました!ありがとうございました!
本川:ありがとうございました!
常にファーストペンギンで居続ける、本川さんの素晴らしいお話でした!
“【エシカルなハウスクリーニング】エシカルノーマルCEO本川誠さん 後編” に対して2件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。