【涙腺崩壊】世界でいちばん強くて優しいパパの物語-後編-

パパは強くて、かっこいい

イントレプレナー特集、フィナーレを飾るのは松永 智教さん。

大企業で働き家族を支えながら、障がい者のお子さんとその家族に活力を与える取り組みを推進。さらに起業して社会貢献型ビジネスで世の中を変えている。
人はここまで強く、優しくなれる。松永さんの人生、各駅停車していきましょう。

この記事は「後編」です

まだお読みでない方はぜひ前編からご覧ください。

専務

ダメダメだった前編から一転、覚醒した松永さんの物語が始まります。

当事者となり意識した福祉ビジネス

中瀬:松永さんはUNISOCという会社を立ち上げていますが、起業されたきっかけは何だったんですか?

松永:始動を受けたのがきっかけですね。

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始動は、経済産業省が主催する「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」。

イノベーターに必要なマインドセットやスキルセットを学ぶ国内プログラム、選抜者を対象としたシリコンバレー派遣プログラム、成果報告会で構成される。

中瀬:どのような分野でビジネスをされているのでしょうか。

松永:福祉分野のビジネス立上げを目指しています。

きっかけは長女の病気です。先天性の心臓の病気で、10万人に1人しかいない珍しい病気です。手術を行った時の、心停止が原因で脳にダメージが残ってしまい、今は車いすで生活しています。

中瀬:今、娘さんはおいくつですか?

松永:ちょうど高校を卒業しましたね。普段は娘に突っ込まれることもありますし、ケンカすることもあります笑

中瀬:仲が良くていいですね。そして松永さんは地位が低いお父さんですね笑。今の事業プランはどういったものなんですか?

松永:始動に応募したのは、福祉の障がい者スポーツをビジネス化するというものです。ユニバーサルスポーツという取り組みがあるんですが、それをうまくビジネスに出来ないかと考えており、色々と試行錯誤してます。

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「ユニバーサルスポーツ」とは、年齢や国籍、障がいの有無に関わらず、皆が一緒に楽しむことのできるスポーツを指すよ。

松永:2017年から、障がいを持つ子ども達向けにスポーツ教室を開催しています。そういった取組をもっと横展開するためにスポーツ指導員を派遣する新しい事業を考えています。J3の引退したサッカー選手とかにスポーツ指導員をやってもらい、彼らのセカンドキャリアにもなるようなビジネスモデルを目指してます。

中瀬:いいですね。元プロの人に教えて貰えるのは少し羨ましいですね。

松永:国も車いす生活を送る人が外出するきっかけになるような取組に助成金を出したりしてるんです。

それと組み合わせれば誰も損しない、三方良しのビジネスが出来るなと思って。

中瀬:そんな制度があるんですね。

松永:デイサービスとして、障害がある人に生活支援や自立訓練を提供している方々がいるんですけど、助成金目的で事業を始め、スマホを渡して時間を潰させるような人も、少なからず出てきている様に感じています。そのような目的とズレた事業を淘汰したいと思っています。デイサービス業界に、スポーツを取り入れてリハビリにもなるような新しい派遣型デイサービス事業を作ろうと考えています。

松永さんとお子さん

松永:デイサービスの施設を作るのはかなりのコストがかかってしまうので、障がい者特別支援学校で放課後に部活という形で体育館やグランドを解放してもらい、指導員を派遣する形が私の一番の理想です。まだ全然そこには到達できて無いんですけどね。

中瀬:従来のデイサービスとは違った画期的なサービスを作っていきたいということですね。

どうして障がい者スポーツの事業をしようと思ったんですか?

松永:障がい者のお子さんを育てるママ同士が愚痴る会みたいなのがあるんです。嫁から「人の愚痴なんて聞きたくないから代わりに行ってきて!」と言われ、参加しました。

松永:ここで課題を感じたんですよ。例えば、自閉症の子だと暴れてしまう子が多くて、ママさんはそういった会に来ても子どもがいると愚痴ることが出来ないんですね。

ここで私が出したソリューションは、子どもとママを「分離する」ことです。

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ふむふむ。

松永:そんなことを考えている中で障がい者スポーツを知り、これなら「親と子供を分離する」という目的が達成できて、ママだけでなくパパも参加しやすいので、一番良いんじゃなないかなと思ったんです。

中瀬:たしかに運動する機会もつくれていいですね。

松永:そうなんですよ。みんな結構楽しんでやってくれるんで。

そして、「親と子供を分離する」ことで、子どもが遊んでいる間にママ同士で愚痴る時間もできるので。

活動の様子

中瀬:この活動はどれくらいされてるんですか?

松永:2017年から、毎月、第一土曜日は必ず活動に参加してます。どんな用事があっても絶対に断って。これを辞めると自分を否定することになり、壊れてしまう気がするんですよ。

中瀬:松永さんも娘さんと一緒に遊ぶ機会があって楽しいんじゃないですか?

松永:楽しいですよ。いつもはケンカばっかしてるんですけど、その日は私も車いすに乗って同じ目線でガチ勝負するんですよ笑 

中瀬:その活動をしていて良かったなと思うことはありますか?

松永:一番はボランティアしてくれた人の成長です。これは今開発している、AVSというサービスの原点にもなっているんですが。

具体例でいうと、引きこもりだった中学生の子が立ち直ったんです。その子はボランティアに来ていた人の息子さんなんですけど、引きこもりでした。しかし、めげずに活動に勧誘して、参加してくれるようになって、社会の役に立ってると感じてくれたみたいです。自己肯定感が上がった結果、引きこもりから立ち直ったんですよ。社会人になった彼は、今でもお菓子の差し入れをしてくれます。

この経験をもとに、「引きこもりに投資するならスポーツ教室に助成金を入れて立ち直らせた方が良いんじゃないか」という感じで、経産省プロジェクト『始動』に応募したんです。

やりたいことは色々あるんですが、今はUNISOCという会社を設立して、AVSというサービスを開発しています。福祉に関わるビジネスという大きな枠は変わらず、AVSボランティアのプラットフォームサービスです。

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松永さんが開発しているAVSは、ボランティアに「参加したい人」と「募集したい人」をつなげるマッチングサービス。最近ではボランティア活動の見える化や、ボランティア活動を通じた起業家教育など、多面的にAVSを使った実証が進んでいるよ。もっと詳しく知りたい人はこちらを見てね。

もっとアツくなれ!日本人!

松永:キヤノンでインキュベーターをしていて、新規事業の提案はしたいけどリーダーはしたくないっていう研究者がたくさんいたんですよ。

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企業におけるインキュベーターは、新規事業の創出を目指す活動の推進・支援を行うよ。

松永:この意見を聞いて、なんて主体性が無いんだって思ったんですよ笑。この人達に主体性を持たせるにはどうしたら良いのか、ということをずっと考えていました。

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あのキヤノンでもそうなっちゃうんだね。仕事増えるのやだもんね。

松永:もう一つ、ボランティアとは無償で社会貢献することだと勝手に定義していたのですが、2年前にある人から「世界に目を向けてみな」と言われたんですよ。世界でのボランティアの定義は「主体的に行動する」ただそれだけだったんですよ。

AVSの活動がボランティアに参加する人を増やし、それが結果的に主体性を持つ人を増やすことにつながるのではないか、と思ったんですよ。

実は、AVSには大企業のイントラプレナーや起業家を育成するビジョンも隠れているんです。

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ボランティアという社会貢献活動用のサービスかと思ったら、その裏には起業家を育成するビジョンがあったんだね。

松永:ボランティアをするきっかけはなんでもよくて、大事なのはそのアクションが積み重なることだと思うんです。高校生とかが一歩踏み出したときに次の一歩を殺さないようにしたいんですよ。

高校の先生はAVSを学業、スポーツ、探求の指導に使いたいって言ってくれています。今、高校のタブレットと連携するような話もいただいていて、AVSを高校生の自分探しに使って欲しいなと思ってます。

中瀬:最初から若者をターゲットにしていたんですか?

松永:いや、最初は若者から年寄りまで万人受けするようなのを作ろうと思ってたんですが、今は大学生と明確に言いきってます。

中瀬:なぜ大学生をターゲットにしたんですか?

松永:理由は明確で、就活の際に学生が利用する用途が明確に見えており、マネタイズもできるからです。

中瀬:確かに、就活でボランティア活動のことを話される学生さんは多くいるので、それがAVSを用いて見える化されていると嬉しいかもしれませんね。アメリカとかでは大学の受験で課外活動を評価の軸に入れているという話も聞きますが、その辺は考えていますか?

松永:その通りなんですよ。AVSは前提として日本で展開していくつもりだったんですけど、ボランティアがもっと当たり前の環境であるアメリカの方が、相性がいいんじゃないかと思い始めてます。

中瀬:起業のきっかけは始動に参加されたことだと思いますが、始動に応募した理由は何だったんですか?

松永:スポーツ教室を広めようと思い、NPOを作ろうとしてたんですよ。そこで、スポーツチームはNPOと普通の株式会社のハイブリッド型で経営していることを知りました。ビジネスとして障がい者のスポーツ教室に取り組み、出てきた課題をソフト会社がシステム化して売るというビジネスモデルを提案しました。

中瀬:参加して良かったと思う事はありますか?

松永:始動に参加して、人生が180度変わったと思いますね。シリコンバレー選抜(100人のうちの20人)になれませんでしたが、+10人の補欠組みとして六本木ヒルズでピッチしたのは良い経験になったと思います。多くの人は一つのプロジェクトが終わると次に進むんですが、私はずっと同じことをしてるんですよ。それがついにうまくいきそうなところまできて、行動し続けることの大切さを学びましたね。

中瀬:始動に参加して行動する大切さを学んでから、いろいろコンテストに参加されてますよね?

松永:そうですね。いっぱい応募していっぱい落選の通知が来てます笑。ほんとに打率1割ぐらいですよ笑

2年前に開発した試作品は、ボランティア情報だけでなく、ラーメンクーポンを配信できる機能があり、「お前何がしたいんだよ」って感じでした。

中瀬:そのラーメンのクーポンはどういったものだったんですか?

松永:ボランティアをする人は5人に1人ぐらいなので、クーポンがインセンティブとなり参加するきっかけになれば良いなと思ってしまったんですよ。だから、実はAVSにはクーポンを配信する機能があるんですよ。

こんな無駄な機能を付けて、開発費400万円を無駄にしましたからね。本当に大失敗笑

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せっかくの助成金をラーメンクーポン機能の開発に使ってしまったらしく、もう同じ過ちはしたくないと豪語していました。

持続可能な優しい社会づくり

中瀬:色々お話を聞いていて、いくつか事業案や構想を持たれていると思うんですが、目標はなんですか?

松永:私が起業家として活動する中での一番の目標は、「娘が食べていけるビジネス」をつくることです。そのために、ビジネスをデザインできるスキルを身に付けています。これは全くぶれていないですね。

中瀬:娘さんのためなんですね。社会全体に対しての目標はありますか?

松永:社会という視点だと、「優しい社会をつくる」ことしか考えてないです。議員になりたいと思っていたこともあるんですが、それよりもビジネスの方が、目的を達成するには早いと気づきました。今後、高齢者が増えて福祉予算が枯渇することは見えているからこそ、税金ではなくビジネスとして成り立つ形で福祉サービスを提供していきたい。そのために、福祉を使ってお金を稼ぐことが悪というイメージを変える必要もあると思っています。ビジネスとは、継続させる為の手段と説明しています。

中瀬:優しい世界を創ると聞くと福祉やボランティアのイメージがあるのですが、その裏にはビジネスとして行政のお金の使い方だったり多くの問題があるんですね。

松永:今の私たちの優しい社会の定義は「助けてほしい人と助けたい人は自然と出会うもの」という前提があると思うんです。実際にはこの出会いはなかなか生まれないと感じていて、もっと出会いやすくしたいと思ってるんですよ。助けたい人からのアプローチが増えると、もしかしたら助けて欲しい側の人は迷惑だと思うかもしれないけど、それはやってみないと分からないので、お節介な人を増やそうとしているのがUNISOCです。

中瀬:UNISOCでお節介な人を増やすことが出来たら、次のステップはどんなことを考えていますか?

松永:まずは主体的に行動する人を増やしたいと思っていて、次のステップとして、本当に助けて欲しいと思ってる人にアプローチできるようにしたいです。助けてほしい人とお節介な人を、上手につなげていければと思います。大きな理想はこんな感じなんですが、まずは目先の課題を解決していかないといけないので、今は常に現状の課題解決に励んでます。

専務

スポーツイベントやボランティアプラットフォームの運営、主体性を持つ人の育成など、様々なことに取り組まれる松永さん。

娘さんが抱える身近な課題から社会や行政に関する大きな課題まで、様々な問題に気づく中で「まずは目先の課題を解決したい」という思いがあるんだね。

中瀬:素晴らしいお話でした、本日はありがとうございました!

ぜひ、松永さんが代表を務めるUNISOCと、そのサービスであるAVSにご注目ください!

松永:ありがとうございました!

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